映画に学べ

和泉歳三

大分の映像制作・モデルタレント事務所CINEMASCOPE代表。
映像ディレクター/ご当地アイドルSPATIOプロデューサー。
「映画ヲタク歴」と「アイドルヲタク歴」は40年以上の筋金入りの「ヲタク」。
九州一のマイナー県・大分の地から全国に向けて「映画愛」「アイドル愛」配信中。

「幕が上がる」〜青春アイドル映画の傑作〜

第103回

2015.3.15更新


SPATIOメンバー全員で、ももクロ主演の映画「幕が上がる」を観て来た。
アイドル映画というと、売れっ子のアイドルが、忙しいスケジュールの合間を縫って撮影し、その知名度だけで客を呼ぶ安易な映画に思われがちだが、この映画、監督もももクロメンバーもガチで作り上げた青春映画の傑作だ。
本広監督は、80年代の角川アイドル映画を目指したという。
確かに、あの時代、角川映画の新人アイドル女優だった薬師丸ひろ子は、大林監督や相米監督、根岸監督など名だたる監督の現場を経験して、見事に看板女優として成長した。それを当代一のアイドルグループ、ももクロの5人でやりたかったらしい。そしてその目論見は見事に成功したと言えるだろう。
人気劇作家平田オリザの、地方高校の弱小演劇部が全国大会出場を目指す。という高校演劇を題材にした小説を脚本化。
「一つのチームで同じ夢に向かって成長していく。」という、このシンプルなストーリーが多くの共感を呼ぶ。
そしてこの設定が、まさに「ももクロストーリー」とも見事にシンクロしてくる。さらに言えば、地方の弱小ご当地アイドルである「SPATIOストーリー」とも。そんな予感があったからこそ、この映画はSPATIOメンバー全員に観せたかった。そしてその予感の通り、メンバーは自分たちの今と重ね、共感・感動してくれたようだ。
特に、弱小演劇部員たちが、自分たちの意思で、人差し指を掲げ「行くぞ、全国!」を連呼するシーンは目頭が熱くなる。SPATIOも今年こそ、悲願の東京遠征を実現させたいと、強く心に誓った。
「アイドル」というのは、ただ可愛いだけ、ファンに媚を売っているだけで、「女優」や「歌手」より下に見られがちだが、それを「極めた」アイドルたちは、「女優」も「歌手」も「モデル」も、すべてを兼ね備えた、恐るべきポテンシャルを秘めている。この映画はももクロを主演に据え、アイドルのポテンシャルの高さを証明してくれている。
順撮りすることで、演技の成長振りをリアルに見る事が出来る。
実際のキャラと役をシンクロさせることで、自然体のドキュメンタリーを見ているような効果も生まれている。
なによりアイドル映画必須の、個々のメンバーの魅力が実に見事に描かれている。堂々の主演、難しい部長役を演じきったかなこは勿論、優等生の微妙な心理を見事に演じたしおりん。滑舌にコンプレックスを持つ演劇強豪校からの転校生ももか。スランプに悩む後輩役のあーりん。弾けっぷりが見事なムードメーカーれに。みんな魅力的だった。中でも個人的には、お笑い担当れにが演じた「がるる」がツボだった。
モノノフ必見の映画である事は言わずもがなだが、青春まっただ中の部活や習い事、アイドル活動に打ち込む10代必見の映画である。
もちろん、かつて高校生だった、夢を追い続ける中年も。
「青春」とはある時期を指す言葉ではない。心の有り様を指す言葉なのだから。