映画に学べ

和泉歳三

大分の映像制作・モデルタレント事務所CINEMASCOPE代表。
映像ディレクター/ご当地アイドルSPATIOプロデューサー。
「映画ヲタク歴」と「アイドルヲタク歴」は40年以上の筋金入りの「ヲタク」。
九州一のマイナー県・大分の地から全国に向けて「映画愛」「アイドル愛」配信中。

ヒッチコック~映画史に残る名作はいかにして生まれたか~

第91回

2013.07.15更新

言わずと知れたサスペンスの巨匠ヒッチコック監督の、最高傑作といわれるアノ「サイコ」の誕生秘話だ。

1959年、
ヒッチコック(アンソニーホプキンス)は新作「サイコ」の製作に向かっていた。が、実際の事件を元にした題材への嫌悪、演出の面でも技術面でもあまりにも斬新な手法を用いるため、
映画会社が資金を出さず、壁に壁に突き当たっていた。さらには彼にとって最大の理解者である妻アルマ・レヴィル(ヘレン・ミレン)との関係もぎくしゃくしだす。
やっとの思いで作品が完成し、試写に臨むが、待っていたのは想像以上の「酷評」だった・・・
映画史に残る不朽の名作は、いかにして生み出されたのか?その裏側とは……。

まず驚いたのは、ヒッチコックと似ても似つかない風貌のアンソニーホプキンスが特殊メイクでヒッチコックを演じていることだ。鋭い眼差しにアンソニー(ハンニバル)ホプキンスを感じるところもあるが、言われなければわからないだろう。
これぞ怪優の真骨頂!

今のホラー映画に対する免疫が出来ている時代と違い、当時はそのショッキングな実話に誰もが眉をひそめた。まだホラーという言葉もなく、B級なショック映画しか存在しなかった時代に、あえて「一流が作るとこうなる」ことを証明しようと躍起になったヒッチコック。
彼もまた映画というオモチャで妄想をカタチにした、永遠の映画少年だったのだと思う。
彼の作品とその言動は遊び心に溢れている。
どこかに必ず一瞬、自身が登場するという「遊び」も彼が最初だし、イングリットバーグマンが演技に悩んでいる姿を見て「たかが映画じゃないか」と慰めたエピソードも有名だ。
「サイコ」のシャワーシーンで、裸がタブーとされた時代。映倫から、「このシーンは裸じゃないのかね。」と詰め寄られた時、「いえ、シャワーキャップを冠っているから裸ではありません」と切り返す。
これは英国人特有のユーモアセンスなのだろう。
そんな愛すべきキャラクターから生み出された作品群だからこそ、映画史に残る名作になりえたのだろう。
ヒッチコック創作の秘密は「遊び心」だったのかもしれない。
そうそう、この映画のエンディングにも、ニヤリとしてしまう「仕掛け」が用意されている。