映画に学べ

和泉歳三

大分の映像制作・モデルタレント事務所CINEMASCOPE代表。
映像ディレクター/ご当地アイドルSPATIOプロデューサー。
「映画ヲタク歴」と「アイドルヲタク歴」は40年以上の筋金入りの「ヲタク」。
九州一のマイナー県・大分の地から全国に向けて「映画愛」「アイドル愛」配信中。

「藁の盾〜ハリウッドにも迫る和製サスペンスの傑作〜」

第89回

2013.05.15更新

当たりハズレの大きい三池監督なので、無条件で「観たい!」とはならないのだが、すこぶる評判が良か ったので観てみた。

孫娘を殺害された政財界の大物・蜷川(山崎努)が、新聞に「この男を殺してください。清丸国秀。御礼として10億円お支払いします」と行方不明の犯人殺害を依頼する全面広告を掲載。
身の危険を感じた犯人の清丸国秀(藤原竜也)は福岡県警に自首する。
警察は警視庁警備部SPの銘苅一基(大沢たかお)、白岩篤子(
松島菜々子)ら精鋭5人を派遣し、清丸を福岡から警視庁まで移送させる。
しかし、清丸への憎悪と賞金への欲望にかられ、一般市民や警護に当たる警察官までもが5人の行く手を阻む。

仲間の中にも10億欲しさの裏切り者がいるかもしれないという疑心暗鬼の中、福岡ー東京1200キロの護送劇が始まる。
果たして銘苅達は、無事清丸を警視庁に移送することが出来るのか?

まず荒唐無稽に思える設定を無理なく、ありえるリアリティにしていることで、緊張感のあるサスペンスが成立している。
新幹線のシーンは台湾の高速鉄道で撮影したらしいが、列車を使ったサスペンス映画は、古くは「天国と地獄」その他「皇帝のいない八月」「新幹線大爆破」ぐらいしか思いつかない。ホンモノを使うことでそれらに劣らない傑作になっていると思う。
登場人物もそれぞれ背景を持っており、しっかりと描き込まれている。
幼女殺しの凶悪犯を童顔の藤原竜也が演じることで、型通りではない、奥深さを感じさせる。
大沢たかおの感情を押し殺した、徹底したSP振りもいい。松嶋菜々子は、ミタさんを思わせる鉄面皮ぶりがハマっている。

こういうスケールの大きなストーリーは、どうしてもハリウッドと比べてしまうが、人間心理を見事に盛り込んで、決して勝るとも劣らない出来になっている。
観て損はない映画だ。
衝撃のラストまで、ノンストップで一瞬たりとも目が離せない。

が、もっとも衝撃を受けたのは、この映画の原作者「木内一裕」が、なんとあの漫画「ビーバップハイスクール」の「きうちかずひろ」だったことだ。
こんな面白い小説書きになっていたとは・・・知りませんでした。