映画に学べ

和泉歳三

大分の映像制作・モデルタレント事務所CINEMASCOPE代表。
映像ディレクター/ご当地アイドルSPATIOプロデューサー。
「映画ヲタク歴」と「アイドルヲタク歴」は40年以上の筋金入りの「ヲタク」。
九州一のマイナー県・大分の地から全国に向けて「映画愛」「アイドル愛」配信中。

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「白い巨塔/飢餓海峡~日本映画史に残る必見の名作2本」

第95回

2013.11.15更新

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日本映画史に残る骨太な社会派人間ドラマの名作2本。

1本は、山崎豊子原作、山本薩夫監督、田宮二郎主演の「白い巨塔」。

大学医学部内の教授の座を巡る権力争いの内幕を暴露した社会派ドラマの名作だ。

浪速大学医学部では東教授が退官となるため、そのポスト争いが水面下で激化していた。東の教え子である財前五郎(田宮二郎)は最有力候補と
目されていたが、傲慢な態度ゆえ東教授に疎まれており、東側は東都大学から菊川助教授という対抗馬を立て、まさにあの手この手の票取り合戦が熾烈を極めていた。
そんなある日、同期の里見から頼まれ、財前は胃癌患者の手術を執刀する。術後に患者は苦しむが、選挙戦に忙しい財前はその原因を探ろうとせず、患者は間もなく亡くなってしまう。
財前は激しい選挙戦を勝ち抜き晴れて教授となるが、そんな矢先、死亡した患者の遺族が財前と病院を相手取り、医療訴訟を起こした。
医療ミスと断定されれば、教授の座はおろか、医師生命をも脅かされない。再び裁判に勝つ為に策を弄する財前だったが、検察側の最後の証人はなんと選挙戦を戦った東都大学の船尾教授だった。
果たして裁判の行方は・・・

まず何より、一切の無駄を省いた、手に汗握るスリリングな橋本忍の脚本が素晴らしい。二転三転、四転、
教授選挙も裁判も最後の最後までどう転ぶかわからない。
加えて素晴らしいのは、
田宮二郎の権力欲に取り憑かれた悪役ぶりと、一癖も二癖もある登場人物たちを演じる日本映画俳優人の層の厚さと確かな演技力。今の日本映画界にこれだけの配役はまず不可能だろう。

これは間違いなく日本映画歴代ベスト10に名を残す名作である。


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2本目は、水上勉原作、内田吐夢監督、三国連太郎主演の社会派推理劇「飢餓海峡」。

昭和22年、青函連絡船沈没事故という大惨事が起きる。
500名以上の犠牲者が出るが、その中に乗客名簿に名前のない2人の身元不明遺体があった。
不審に思った函館警察の弓坂刑事(伴淳三郎)が捜査するうち、それは質屋に押し入った三人組強盗のうちの二人であることが分かる。
弓坂は、事件の夜に姿を消した犬飼多吉(三国連太郎)という男を追って下北半島へ赴く。
同じ頃、青森県大湊の娼婦・杉戸八重(左幸子)は、一夜を共にした犬飼と名乗る見知らぬ客から、思いがけない大金を渡される。その後、犬飼を追跡する弓坂刑事が大湊に現れて八重を尋問するが、八重は犬飼をかばって何も話さなかった。八重は借金を清算して足を洗い東京に出る。
10年後、八重はふと目にした新聞の紙面に驚愕する。舞鶴で食品会社を経営する事業家・樽見京一郎なる人物が、刑余者の更生事業資金に3000万円を寄贈したという。記事に添えられた樽見の写真には、行方の知れない恩人・犬飼の面影があった。八重は舞鶴に赴くが、樽見と会った翌朝、彼女は海岸に浮かぶ死体となって発見された。当初は自殺と思われたが、東舞鶴署の捜査官・味村刑事(高倉健)は八重の懐中から樽見に関する新聞の切り抜きを発見し、彼女の死は偽装殺人であると看破する。
彼の執拗な捜査によって、10年前の台風の夜に津軽海峡の海上で起きた殺人事件の姿が浮かびあがってくるのだったが・・・
物語は衝撃的な結末を迎える。

追いつ追われつの追跡劇の面白さ、真相が明らかになっていく推理劇としての面白さに加え、当時の社会背景「貧困」が生んだ悲劇という社会劇というテーマが根底に流れ、重厚な人間ドラマになりえている、これも歴代日本映画10本に入る名作である。

どちらも30年ぶりぐらいにスクリーンで観たが、今観ても十分に面白く見応えのある作品だった。
劇場には年配の観客が多く、日本映画の黄金期を知る方達なんだなと思った。
しかし、こういう名作こそ、今の若い観客に観て欲しいものだ。