映画に学べ

和泉歳三

大分の映像制作・モデルタレント事務所CINEMASCOPE代表。
映像ディレクター/ご当地アイドルSPATIOプロデューサー。
「映画ヲタク歴」と「アイドルヲタク歴」は40年以上の筋金入りの「ヲタク」。
九州一のマイナー県・大分の地から全国に向けて「映画愛」「アイドル愛」配信中。

「舞妓はレディ〜舞妓に人生の春を見る〜」

第102回

2014.10.15更新


京都のお茶屋・万寿楽にある夜、絶対に舞妓になりたいと方言丸出しの少女・春子(上白石萌音)が押し掛けてくる。
春子は必死で頼み込むが、誰も相手にしようとしない。
偶然その様子を目にした言語学者の「センセ」こと京野(長谷川博己)が、鹿児島弁と津軽弁のバインガルな彼女に関心を寄せ、自分が京都弁を仕込み、立派な舞妓にしてみせると公言したことから、晴れて万寿楽の仕込み(見習い)になる春子だったが……。
しかしそこは独特の言葉遣いや厳しいしきたりのある世界。
悪戦苦闘の末声まで出なくなってしまった春子は果たして、一人前の舞妓になれるのか?

「Shall we ダンス?」の周防監督が、とある少女が舞妓を夢見て京都の花街に飛び込み、立派な舞妓を目指し成長していく姿を歌や踊りを交えて描く。
タイトルからも想像がつくように、これはあの名作ミュージカル「マイフェアレディ」を舞妓の世界に置き換えた、最高にハッピーな日本映画にしか作れない日本製ミュージカルだ。
立派な京都ご当地映画でもある。
一人の少女の成長物語でもある。
主演の新人、上白石萌音自身の成長物語でもある。
800人の中から選ばれたという、この子の透明感のある歌声とキレのあるダンス。そして何より純朴な笑顔が素晴らしい。
厳しい稽古に耐える姿を観客の誰もが応援したくなる。
厳しくしつけ、時に温かく包み込む、女将さん役の冨司純子がまた、これ以上無いはまり役だ。その他周防組常連の草刈民代や竹中直人らが脇を固める。
これまで日本製ミュージカル映画というと、これ!という作品が見当たらないが、これこそが間違いなく、決定版といえる出来だ。
「アナ雪」にも決して負けていないと思う。
むしろ日本人なら誰でも共感出来る分、勝っていると言ってもいい。
CG全盛の時代にあって、アナログな「生身の人間力」礼賛映画になっている。
これこそ、日本映画の魅力。生きる道だと思う。
「舞妓はアイドルだ」というセリフが出てくる。
そして最後の最後、岸部一徳が春子にいうセリフ。
「舞妓に大切なのは「若さ」や。しかしただの「若さ」やない。一生懸命な「元気な若さ」が大事なんや。お客さんはそこに「人生の春」を見に来るんや。」

「若さ」とは、年齢の事ではない、「心の持ち様」のことである。
人生に希望を持てずにいる、全ての人に見て欲しい。
観終わって、映画館を出るとき、必ずやあなたの胸に「希望」の灯が灯っている事だろう。