007スカイフォール~オールドファンも納得のボンド映画~
第87回
007生誕50周年記念映画「スカイフォール」。
ダニエルクレイグになってからの前2作は、ボンドがドイツ人になったみたいで、どうも好きになれなかったのだが、本作はオールドファンも納得の、まさに50周年記念に相応しい出来だった。
ファンにはたまらないニヤニヤネタ満載、ファンでなければその辺はわからないだろうが、それでもCGなしのアクションや、展開の読めないストーリーは十分楽しめる。
冷徹で無骨な感じがしていたグレイグボンドだが、本作の冒頭にこんなシーンがある。敵を追いかけ、カーチェイスからバイク、列車の屋根と息も付かせぬアクションの連続の最中、列車の破れた屋根から、客車内に入って来た時、驚く乗客の前で、はげ格闘で着崩れたスーツを直してみせる。この洒落っ気こそがボンドだ!些細な事だが心憎い演出だ。
ボンド映画と言えば、登場するヨーロッパの名車の数々。
メルセデスゲレンデバーゲンVSアウディA5のカーチェイス。レンジローバー、NEWジャグアーXJ、そして極めつけは・・・64年式アストンマーティンDB5!そう「ゴールドフィンガー」に登場した初代ボンドカーだ!
そしてジャグアーからアストンマーティンに乗り換えて走り出した途端、それまで一切流れていなかった、お馴染み「ボンドのテーマ」が流れる!!
そして助手席に乗せた上司「M」が、乗り心地が悪いわねぇ。」というと、「うるさい」と言った表情でシフトノブのボタンに手をかけるボンド。M「助手席ごと吹っ飛ばしちゃって。」・・・このやり取り、DB5の隠し機能を知るオールドファンなら間違いなく拍手喝采したくなる演出である。
さらに今回、ボンド映画のレギュラー陣が、MI6の上司「M」に恨みを持つ元MI6の諜報部員が、Mの命を狙い、ボンドがそれを阻止するというストーリーなだけに、発明課の「Q」、最後には秘書の「2代目マネペニー!」まで、これまでになくストーリーに深くかかわってくる。
その意味で、今回のボンドガールは(史上最年長の)「M」だろう。
ただひとつ惜しいのは、敵役の元MI6を演じるハビエル・バルデム。
「ノーカントリー」で、かのハンニバルレクターに匹敵するぐらい怖いキャラを怪演していただけに、もっと強烈なキャラにして欲しかった。
いずれにしても、オールドファンも、そうでない人も、十分満足出来るボンド映画である。