うれしがり日記

GONG

リシーヴ魂隊の関西地区総長のGONGさんのコラム。『ヤマハ携帯サイト「ケータイクリエイターズ広場(Kクリ)」にて3つのレギュラーコーナーを展開中。あらゆるジャンルに興味を持つ趣味人間。特に収集欲、物欲が強い。広く浅い知識を誇るオタクになり切れないオタク。』とご本人。楽しいコラム間違いないです。

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『「いい音」って何だ?!』

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我々の世代は、アナログからデジタルへの転換期という激動の時代を
生きて世代なんだと思う。

テクノロジーは劇的に、確実に進化した。
しかし。アナログが完全に消し去られるかと思いきやさにあらず。
アナログ愛好家は根強く、むしろこのデジタル全盛時代にあってアナログの
良さが見直されつつある。

その傾向が顕著なのが音楽・音響業界であろう。
アナログオーディオ愛好家らはみな口にする。「音がいい」と。

果たしてデジタルとは何だったんだろうか?
デジタルとは何をもたらしたモノだったのだろうか?


・・・というわけでですね。

ちょっとドキュメンタリーチックに初めてみちゃったりしましたが(笑)
いや本当にいつも思うんですよ。
小学生の時オーディオに目覚めて以来今日まで
「“いい音” ってのは一体何なんだ?」って。


まず自分自身の体験から振り返ってみようかなーと思うんですが、これまでの
人生の中で「あ、いい音♪」と思った瞬間というのはたくさんありました。


まず「録音」というものに初めて挑んだのは子供の頃、家にあった黒い
モノラルのラジオカセットレコーダーでした。

好きなテレビ番組の音声を録音することから始めたわけですが、最初は
「ライン録音」というものを知らなかったもんですから、レコーダーの内蔵マイク
をテレビのスピーカーに向けて録音しておりました。

経験ある方、多いんじゃないですか?同世代の方。(笑)
奥からかーちゃんの呼ぶ声が聞こえてきたりしてね。「し~~~っ!」って。

それが普通だと思っていて、当時は録音出来るということそのものが嬉しくて、
録音したものを何度も繰り返し聴いていました。

そしてやがて「テレビにはイヤホン端子がある。レコーダーにはマイク端子が
ある。コレを繋げばいいんだ。」ということに気づくわけですね。
そうして録音したものを聴いた時は衝撃でした。
今までのは何だったんだ?と。(笑)

もう母親の声に怯えることもなく、快適なレコーディングライフが
始まったのでありました。

やがて録音の対象がテレビやAMラジオからレコードやFMラジオに移り、
「音楽鑑賞」と呼べることを始めるようになったわけです。

安物のプレイヤーではありましたが、やはりレコードの音はいいなぁ、と
その時思いました。

「ステレオ」というものに気づいた時も衝撃でしたね。
スピーカーが2つあるのは単に大きな音を出す為だと思っていたので(笑)
音像定位というのがこんなにも面白いものなのかと、感動しました。

少しづつ機材をグレードアップしていき、ついに「カセットデッキ」というものを
手に入れました。

そこで次の衝撃が来ます。「メタルテープ」です。
それまでのノーマルポジションのテープとは明らかに違う高音の煌き、
中低音の骨太さ。

今でこそこうして言葉で表現出来ますが、当時の自分としては
「なんかよーわからんけどメタルテープすごい!」と思ったものでした。(笑)

長らくカセットテープとの付き合いは続き、テープは貯まり、だんだん
置き場所に困ってくるまでになりました。

この時代は「ノイズ」とりわけ「テープヒスノイズ」との戦いでした。
ドルビーNRのBだのCだの、dbxだのと、ノイズリダクションの方法を色々と
研究したり、RECレベルをあれこれ変えてみたり。

特に自分で音楽を作るようになってからは、このノイズというものが
許せなくなってきました。

そうこうしているうちに、デジタルの足音が少しづつ聞こえてきたのです。

まずCDの登場。これはショックでした。まるで夢のようなシステムでした。
もうレコード針のメンテナンスやウエイトの調整、回転数の調整に神経を
使わなくても良くなったのです。これはまさしく革命でした。

再生だけでなく録音にもデジタル革命が訪れます。「DAT」の登場です。
あれだけ頭を悩ませたノイズリダクションが、全く不要になったのです。
またしても「何だったんだアレは?!」です。

デジタルの出現によって音楽の楽しみ方はすっかり変わりました。
それは単に音が良くなったというだけなく、
「いい音を手に入れる為の苦労がいらなくなった」ということなのです。

しかしそれは同時に、オーディオマニアとしてのささやかな楽しみを奪われて
しまったということでもありました。
今振り返って思えば、いい音の為に色んな苦心や工夫をするという作業は
喜びでもありました。

当時僕は家電販売店に勤めていて、売り場に行くとマニアらしきお客さんが
何台ものCDプレイヤーを聴き比べて悩んでいました。

当時はデジタルを「完璧だ」と思っていたので、「CDなんてどれも同じなのに
聴き比べて違いなんて解るんだろうか?そんなことに労力を費やすなら
アンプとスピーカーと部屋のセッティングに注力した方がいいんじゃないの?」
などと思っていたものでした。

デジタルの時代になってからは良くも悪くも、肩の力を抜いて音楽を楽しめる
ようになりました。
MDというものも出てきましたが、さして大きな感動はありませんでした。

だんだん、音はパソコンで扱うようになり、MP3ファイルのビットレートをどの
くらいにしようか?って時に音質を意識する程度になりました。

もうこれでオーディオは行き着くところまで行ったのかな?
もう「いい音」に感動することは無いのかなー。と、思っていたのですが、

まだありましたですね。

ミュージシャンの高橋マコトさん(あの「もんた’ブラザース」のギタリスト)が
超オススメしていたスピーカーがありました。
「タイムドメイン・スピーカー」です。

とにかくいい音なんだと。で、インターネットで調べてみましたら、この
スピーカーを作っている「タイムドメイン社」はなんと奈良の会社だったのですね。

そしてサイトをよくよく読んでみると、このスピーカーは原理からして
従来のスピーカーの常識を覆すものでした。

それじゃあっていうことで、このメーカーのフラッグシップモデル・・・は、ちょっと
高くて手が出せないので(苦笑) 「ミニ」という2万円くらいの、PCスピーカー
のようなサイズのものを買ってみました。

とりあえずCDを繋いで鳴らしてみたところ・・・ビックリしました!
音像定位がハンパでなく鋭いのです。「ここで音が鳴ってる!」という位置を
ビシッ!と指差すことが出来るのです。

あと「こんな音あったっけ?」と、今まで聞こえなかった楽器の音が聞こえて
きたり。まぁ驚きました。

当時の僕は電気屋さんを辞めて、通信カラオケや着メロのデータを作る、
いわゆる「耳コピ」の仕事をしていたのですが、

それまでは耳コピの作業は密閉型のヘッドホンでなければ不可能でした。
スピーカーでは細かい音が聞き取りにくいのです。
(音量を上げれば聞こえるが、それはご近所迷惑。)

しかしこのタイムドメインならそれが可能でした。
すごいもんだなーと思いましたですね。

あとひとつ、音に感動したことがありました。

あるライブハウスへ飲みに行った際、そこで居合わせたお客さんが
超オーディオマニアで、ipodにヘッドホンアンプを繋ぎ、さらには
特注のイヤホンを使って音楽を楽しんでおられる方でした。

で、聞かせてもらったのですが・・・スゴかった!
ジャズの曲だったのですが、いい音なんてレベルではありませんでした。
ライドシンバルの音なんかがもー、本物なのですよ。耳のすぐ横で本物の
シンバルがカンカン鳴ってる感じで、あのリアリティったら無かったですね。


で、そんなこんなで、昨今。

レコーディングの現場では2496(24bit・96KHz)以上での録音が常識となり
(ちなみにCDは16bit・44.1KHz)リスニングのシーンでも
「ハイレゾオーディオ」なるものが普及しはじめてきました。

完璧だと思っていたCDが「それでは不足だ」と言われはじめてきたのです。
えらい時代になってきたもんですな。

また別の方向からもCDを否定する声が上がってきました。
アナログオーディオマニアの方々です。

確かに言わんとすることは解るんですよ。CD、つまりデジタルの音とは
量子化されたものであり、言わば間引きされた音なんですよね。

それに対してアナログの音は、マイクが拾った振動の波をそのまんま
形にしたものなので、デジタルよりアナログの方が音がいい、という理論も
否定はできないのです。


・・・さあさあ、ここらでもうすっかり解らなくなってしまいました。

「いい音」って、一体なんやねん?!?!


オーティオ機器メーカーが目指していたであろう「いい音」とは、おそらく
高忠実度再生、いわゆる「Hi-Fi」でしょう。
録音時の信号を、いかに歪み少なくスピーカーまで運び、出力するか。
この競争でした。

で、デジタルの出現によってそれは達成されたかのように見えたのですが、
実はそうではなかったようなのです。

デジタルは、果たして本当に完璧だったのか?

例えば仮に、アナログレコードの再現忠実度が70%ぐらいだとして、CDが
95%あったとすれば、この数字だけ見ればCDの方が「Hi-Fi」であると
言えるでしょう。

しかし、CDがカバーしきれなかった5%、もしここに実は音楽的に重要な部分
が含まれていて、その部分をアナログレコードが持っているのだとしたら・・・
必ずしも「CDの方がいい音」とは言い切れなくなるのです。

・・・伝わってますか?(苦笑)
自分でも書きながらすごーく抽象的だなーと思うのですが。

でも大事なポイントだと思うので、あえて書きました。今でもアナログレコードを
愛好する方というのは、この部分に魅力を感じているからなのかな?
と思うのです。決してノスタルジーな感情だけではないと思うのです。


ま、ようするにですね。(焦)

「いい音」を語る時に、機械的な測定値で比べた場合と、人間的な感覚で
音楽として比較した場合とでは、結果が違ってくるんではないかな?と。


で、
これが音楽制作の現場になってくると話しはさらにややこしくなるわけです。

作られた音を忠実に再現するのがオーディオにおける「いい音」であるならば、
じゃあ、これから音を作るぞ、という場面において「いい音」というのは
どういう音なのか?

エレキギターという楽器がございますね。
エレキギターは通常、ギターアンプに繋いで音を出します。

このギターアンプ、さぞ音がいいかと思いきや、例えばCDを繋いでギター
アンプから音を出すとすんごいショボい音しか出ないのですね。
つまりオーティオ的にはギターアンプは全然Hi-Fiじゃないわけです。

そして一方のエレキギター。これまたオーディオ装置に直接繋いじゃうと
全くショボい音しかしない。
(インピーダンスとか色んな問題が絡むわけですがそれは置いといて)

で、エレキギターとギターアンプ、このショボいもん同士(笑)を繋いで
音を出すとあら不思議。最高にカッコいい「いい音」が出てくるのです。

音を「作る」場面における「いい音」はかなり主観的なものになってきます。
極端に言えば作った本人が「これがいい音なんだよ!」と言い切ってしまえば、
客観的な評価は別として、その人にとっては傑作ということになるわけです。

他の楽器の場合はまだしも、これがシンセサイザーということになると話しは
さらにさらにややこしいことになります。
なにせ自然界に無い音をゼロから作るわけですから、何がいい音なのかの
基準が全く無いのです。

面白いもんで、シンセサイザーの世界もデジタル全盛の昨今にあって
アナログシンセサイザーの価値が見直されてきています。

デジタルシンセがアナログシンセをエミュレートするなんていう
よーわからん事態(笑)も、もはや当たり前となってきました。

ちなみに皮肉なもので、リスナー時代は敵であった「ノイズ」は、
シンセサイザーにおいては重要な要素の一つだったりするのですよね。
ああ皮肉。

「いい音」で思い出した話しがもう一つあるのですが、

一時期、レコーディングスタジオではヤマハの「NS10M」というモニター
スピーカーが広く使われていました。
雑誌などでスタジオの写真を見たりすると、必ず白いコーンのスピーカーが
で~んと構えていました。

で、あるアレンジャーの先生とお話しする機会があった際に
「NS10Mってそんなに音がいいんですか?」と聞いてみますと
「いいや、全然。」と意外な答えが。

「NS10Mは一番いいスピーカーじゃないけど、一番“平均的”なスピーカー
なのよ。」と。

つまり、CDを買って聴く人は必ずしも皆がいいオーディオ装置を持っている
わけではなく、むしろ安いラジカセやヘッドホンで聴く人の方が多い。
そういう人が聴いてもある程度いい音で鳴る様、チューニングする必要が
あるわけですね。

その作業を行う上で、NS10Mのようなスピーカーはうってつけなんだ、と。

これまた目からウロコなお話しでした。


と、ここまで書いてみて・・・

音の世界というのは、料理もしくは食品の世界と同じだなぁ、と思いました。

お店に行って高いお金を出したり、高い食材を購入すれば、ある程度
美味しいものは食べられるわけですが、一方僕のような庶民は、インスタント
ラーメンや牛丼を食べても「美味い」と感じることはあるわけです。

ランクA5のサーロインステーキが「美味い」のと吉野家の牛丼の「美味い」は
当然異質のものだとは思うのですが、程度の差はあれ、心を動かされることに
変わりはないのです。

同じように「いい音」というのは、きっと一つじゃないんだなぁ、と。
ステーキのような美味さの音もあれば、カップラーメンのような美味さの音も
あるんですよね。きっと。

ということは、結局「いい音」というのは多分に主観的なもので・・・

と、書いちゃうと、ここまでの長文が全部無意味になってしまうので
書きたくはないのですが(笑) でもまぁ、そういうことなんですよね。
「いい音」とはいかに「気持ちいい」か?ってことなわけでして。

そして、「いい音」というのは求め、探し続けていくからこそ、
それに出会った時の感動は大きいんですよね。きっと。

・・・まぁ、腹が減ってる時は何食べても美味いってことですわ!(爆)
あぁ、どんどん墓穴を掘っていってしまう・・・


あとやっぱり、耳は鍛えないとですね。でないと、折角いい音に出会っても
気付かずに通りすぎてしまうかも知れない。
まずは、生演奏をいっぱい聴くこと。生に勝るHiーFiはありません。

耳を研ぎ澄ませて、感性を磨いて、
これからも「いい音」をいっぱい聴いて、心に栄養を与えてあげましょう!


これでやっとまとまった・・・のか?