うれしがり日記

GONG

リシーヴ魂隊の関西地区総長のGONGさんのコラム。『ヤマハ携帯サイト「ケータイクリエイターズ広場(Kクリ)」にて3つのレギュラーコーナーを展開中。あらゆるジャンルに興味を持つ趣味人間。特に収集欲、物欲が強い。広く浅い知識を誇るオタクになり切れないオタク。』とご本人。楽しいコラム間違いないです。

『今そこに当たり前にあるものを愛でよう』


ウチの実家の窓からは鉄道が見えます。

僕が物心つき始めた頃、

当時は国鉄と呼ばれていたその鉄道には蒸気機関車や
ディーゼル列車が普通に走っていました。

それを毎日毎日見ていた僕は
「いつも同じ列車ばかりつまらない。たまには電気機関車
が来ないかなぁ。」
などと、今思えば罰当たりな(笑)ことを思っていたの
でした。

当時のその路線はまだ電化されていなかったので
電気機関車など来るはずは無かったのですが、そのことに
気付いた頃、いよいよ電化されることになりました。

見慣れた赤とクリーム色の気動車に代わって緑や白の
鮮やかな電車がやってきて、心躍りました。
「103系」や「113系」と呼ばれていた車両でした。


しかしその電車もやがて見飽きてまいりまして、
「もっと変わった電車が来ないかなぁ」と、またそんな
ことを考えていたところ、

国鉄は「JR」と名前を変え、やがて113系に代わり
「221系」という車両が走るようになりました。

最新鋭の車両が見慣れた景色の中を走り、またも
GONG青年は心を躍らせたのでした。


それから20年余りが経ち、
青年はすっかりおっさんとなりましたが、しかし
221系は今も現役で頑張っておりまして、

いい加減見飽きてきました。(笑)



さて、昨今、鉄道ブーム、といいますか、鉄道ファンの
存在というのが良しにつけ悪しきにつけ、世間に認知
されるようになってきました。

時代は流れ、あの見飽きていたハズの蒸気機関車は、
今や国宝のような扱いを受け、どこそこでSLが走ると
なると大勢のファンが追いかけ回す始末。


そして、今また鉄道熱が再燃したGONG中年もまた、
SLにノスタルジーを感じてしまう1人になり、

幼少の頃を振り返り「あの頃もっとよく見ておけばよか
った。写真もいっぱい撮っておけば良かった。」

と、軽い後悔の念に囚われるのでありました。


SLだけではありません。
毎日のように眺めていた凸型の赤いディーゼル機関車
「DD51」までもがいつの間にか希少な存在として
マニアに有り難がられていたのでした。


鉄道ファンのジャンルの1つに「葬式鉄」ってのがあ
りまして(笑)

ある車両が引退するとか、ある路線が廃線になると聞く
とにわかに集まり盛り上がる鉄道ファンを言うのですが、

以前は「なんじゃそりゃ」と思っていた彼らの心情も
今ならなんとなく解かる気がするのです。

「あんなにウンザリするほどしょっちゅう走っていたのに」
あの見飽きたディーゼル車や113系も、今では懐かし
さを感じずにいられなくなってしまっていました。


まぁ考えてみれば当たり前のことなんですけどね。

形あるものはいつか滅びる。


いつでも当たり前の存在としてそこにあったもの、
例えばあの国産旅客機・YS-11だって、

見飽きて、忘れて、なのにラストフライトだと知らされ
ると、九州までその姿を観に行かずにいられなかった
自分がいました。


みんないつかは最後の時が来るのです。
物だけじゃありません。人だって。


今年、小橋建太というプロレスラーが引退します。
鉄人と呼ばれた彼ですら、最後の時を迎えるのです。

いつもいつも、僕らを楽しませ、夢を与えてくれた
ヒーロー達。
プロレスラーや格闘家たちだって、いつかは引退の時が
来るわけです。


ふとそう思った時、

今現役で元気に走っている221系。こいつだって
いつかは最後の時が来るわけで。

懐かしいと振り返り、同時に今の自分のことを思い出し
たりする日がいつか来るんだよなぁ、って。


だったら、

今、当たり前のように目の前で走っている彼らをしっかり
見てやろう。
飽きた、なんて冷たいことを言わずに、愛でてあげよう。

今、当たり前のようにそばに居る人を大切にしよう。
当たり前のように居てくれることに、感謝しよう。


あとで後悔しないために。
永遠でないことは、すでに解かり切っているのだから。



そんな当たり前のことについて考えてみると、

「当たり前」って、すごいことなんだよなぁ。

って、思ったのでした。