電気ぶたナマズ

hebi* (ナ マ 田 あ す か)

独特の切り口、独特の表現、独特の世界観!しかし読み終わってからジワっと「なるほど。。」リシーヴ連載当初から人気大爆発の『ナマ田あすか』さんのコラム。正体不明の読む快感に中毒者続出!? 『あすかワールド』あなたもそっと、覗いてみませんか??病み付きになります。

【雨越しの風景】

第101回

2014.7.15更新

雨は嫌いだったはずなのに、近頃は雨の日が好きなのだ。
昔に比べ、家に居る時間が増えたからかもしれないが
雨音や雨の降っている光景にぼーっと耳を澄まし、
見入ってしまう。カプセルの中に居るようで全てが滑らかになる。

雨越しに今日もぼーっとしてしまった。
その向こうに見えたのは何だったろうか。

カエルのお墓に傘をさし続けていた子供は私だった。
花壇のブロックの上に避難させてあげたカタツムリを
誤って踏んでしまい泣きそうになった。
庭の紫陽花の色が変わった時の驚き。
雨の降り始めの校庭の砂の匂い。
バッタを捕まえに行った草むらに霧雨がかかった青い匂い。
濡れた制服の蒸気が溜まった教室。
学校帰りに彼氏と雨宿りした神社の大木。
土砂降りの中のドライブは、まるで世界に2人だけになったようで
このまま時が止まればいいと、家に着かなくなればいいと思っていた。
雷雨の下、嬌声をあげながら走った3人乗り自転車。
傘は2本あるのに1つの傘だけで行こうと促すあの時のあの人。
いつも傘を失くしてしまう人。
雨のドライブに距離を感じた日。
雷鳴に怯えて妹と潜り込んだ布団。
猫と眺める今日の雨。
エレクトーンの発表会でひいたシェルブールの雨傘のメロディ。
浴衣の袂で妹の頭に傘を作った夏祭り。

ちっぽけな一個人の雨物語でも沢山あるものだな。
まだまだ書ける気がする。
案外これ、いい人生なのかもしれないな。
結論はすぐに出さず、幸せを感じるまで待てばいいのだ。
待っていてよかった。よかった。よかった。