電気ぶたナマズ
hebi* (ナ マ 田 あ す か)
独特の切り口、独特の表現、独特の世界観!しかし読み終わってからジワっと「なるほど。。」リシーヴ連載当初から人気大爆発の『ナマ田あすか』さんのコラム。正体不明の読む快感に中毒者続出!? 『あすかワールド』あなたもそっと、覗いてみませんか??病み付きになります。
【雨越しの風景】
第101回
雨は嫌いだったはずなのに、近頃は雨の日が好きなのだ。
昔に比べ、家に居る時間が増えたからかもしれないが
雨音や雨の降っている光景にぼーっと耳を澄まし、
見入ってしまう。カプセルの中に居るようで全てが滑らかになる。
雨越しに今日もぼーっとしてしまった。
その向こうに見えたのは何だったろうか。
カエルのお墓に傘をさし続けていた子供は私だった。
花壇のブロックの上に避難させてあげたカタツムリを
誤って踏んでしまい泣きそうになった。
庭の紫陽花の色が変わった時の驚き。
雨の降り始めの校庭の砂の匂い。
バッタを捕まえに行った草むらに霧雨がかかった青い匂い。
濡れた制服の蒸気が溜まった教室。
学校帰りに彼氏と雨宿りした神社の大木。
土砂降りの中のドライブは、まるで世界に2人だけになったようで
このまま時が止まればいいと、家に着かなくなればいいと思っていた。
雷雨の下、嬌声をあげながら走った3人乗り自転車。
傘は2本あるのに1つの傘だけで行こうと促すあの時のあの人。
いつも傘を失くしてしまう人。
雨のドライブに距離を感じた日。
雷鳴に怯えて妹と潜り込んだ布団。
猫と眺める今日の雨。
エレクトーンの発表会でひいたシェルブールの雨傘のメロディ。
浴衣の袂で妹の頭に傘を作った夏祭り。
ちっぽけな一個人の雨物語でも沢山あるものだな。
まだまだ書ける気がする。
案外これ、いい人生なのかもしれないな。
結論はすぐに出さず、幸せを感じるまで待てばいいのだ。
待っていてよかった。よかった。よかった。