音を科学する

第1回

当コラムでは、音を科学的に考察し、美音というテーマについて、少しお話したいと思う。
あちこちに脱線する事が予想されるが、お目汚しにお付き合い願いたい。
何からお話したら良いのか?!悩んでしまうが、人間に備わっている五感の内、聴覚というのは感覚器官の中で最優先されている訳では無い。
やはり視覚が一番と考える人が多い。
しかしながら聴覚が劣っているか?!と問われれば、決してそうでは無い。
例えば後方等の、視覚的に感じていない方向から、「○△さん!」と呼ばれても、ある程度の人間は瞬時に反応するのである。
何故そんな事が出来るのか?!
人間には左右の耳があって、左耳と右耳に入る音の、数万分の1秒といった時間差を、脳が反応して聞き分けているのである。
そういった優れた感覚機関であっても、お店や家を作る場合、内装や棚の配置など視覚的な面で、いろいろ思案する方は多いが、BGMや音に関しては、最後にコレでイイヤっ!としてしまうケースはとても多い。
またそれだけでは無い。
視覚感覚と相まった時のイメージは、さらに膨らんでいき、聴覚の重要性は尚更大きい。
例えば可愛い女の子の映像に、反社会的なBGMが付いていれば、ギャップ的には面白いかも知れないが、意図が伝わらないケースが多いし、女の子のイメージが、ごく自然に反社会的になってしまう。(ソレを狙っている場合も、あったりするかも知れない)
と前置きは置いておいて、知っての通り、音は空気が振動して、耳でそれを受けて、脳が反応する。
電気的には、マイクが空気振動を受けて、電気信号に変換し、アンプで増幅させて、スピーカーを振動させ、空気に伝えるという循環である。
この方程式をステレオという機材に置き換えると、耳の部分はCD等の音源となり、アンプやスピーカーは脳という事になる。
スピーカーやアンプが、より正確に変換されないと、違ったイメージを人に与える事になってしまう。
そこが美音への近道。
音の重要性と、音楽の重要性を一緒くたにしてしまうと、何が何やら分からなくなってしまうので、ソコは切り離して考察したいが、人間の感情を左右する事の出来る音楽を切り離して、ソレを語る事は難しい。
当の私も、映画館の音響調整という、かなりニッチな仕事を生業にしているが、結局の所、スターウォーズのテーマ曲のある一節で、鳥肌が立つか?!立たないか?!という事が、ある意味評価基準だったりする。
コレは、聴覚による人間のホルモン分泌と、かなり関わっているんだと思う。
私が中学生だった頃、家にはかなり立派なシステムコンポーネント(今では死語?!)があったのだが、奏でる音にある程度は満足はしていたのだが、更なる美音を求めて、スピーカーを米国ブランドの物に交換し、当時イーグルスのホテルカリフォルニアのLPを針を落とした。
もう目から鱗が落ちるような音の洪水に思わず感動し、自然に涙がボロボロ...。
まぁこんな経験から、この業界に足を踏み入れる事になったのだが、音楽の力は素晴らしい!好きな音楽を好きな音で聴く事で、ストレスの発散につながり、気分を豊かにしてくれる。
本題の美音への道とは、話が逸れてしまったが、スピーカーというアイテムは、基本設計から60年余り、劇的な進化を遂げていない。
アンプもしかり、省電力化や軽量化,大出力化が進んだりはしているものの、基本的に電気信号を増幅する機材に過ぎない。
では何が出来るのか?!という事になる。
昨今の機材はデジタル化が進み、いろいろなアプローチで、正確な変換に有効な方法があったりする。(脳を校正する訳である)
あまり一般的では無いが、ソレを施す事で、ある程度正確な変換が行われ、音楽の持つ力を最大限に生かす!
そんなお手伝いが出来ればと思う。